衛生管理者の難易度は本当に低い?協会20試験の合格率で位置づけを検証【2026年版】

衛生管理者の勉強時間を調べると、どのサイトにも同じ数字が書いてあります。第一種は約100時間、第二種は約60時間。

あまりにきれいに揃っているので、気になって出どころを探してみました。ところが、この数字がどこから来たのかを示しているページが見つかりません。協会が公表しているわけでもありません。

だからといって、でたらめだと言いたいわけではありません。ただ、出所の分からない数字をそのまま信じて計画を立てると、足りなかったときに困るのは自分です。

そこでこの記事では、公表されている数字だけを使って、難易度と勉強量を考えてみます。取り上げるのは次のことです。

  • 合格率の最新データと、その正しい読み方
  • 同じ協会がやっている20の試験のなかで、衛生管理者はどのくらいの位置か
  • 合格率が「試験の難しさ」を表さないことが分かるデータ
  • 勉強時間を自分で見積もるための材料
  • 落ちる人がつまずいているところ

結論を先に言うと、衛生管理者は「簡単な資格」と言われがちですが、データで見るとそこまで楽ではありません。

この記事の数値は、2026年8月時点で安全衛生技術試験協会が公表している統計から取っています。計算した箇所はその旨を書いています。制度や統計は更新されるので、最新の情報は公式サイトでご確認ください。

まず合格率の最新データを確認する

協会が公表している直近2年の数字です。

年度受験者数合格者数合格率
令和7年度第一種66,401人31,046人46.8%
令和7年度第二種40,653人19,796人48.7%
令和6年度第一種64,911人30,081人46.3%
令和6年度第二種39,262人19,546人49.8%

だいたい半分が受かって、半分が落ちる試験です。

ここで一点、注意しておきたいことがあります。合格率の推移を載せているサイトは多いのですが、同じ年度の数字がサイトによって違うことがあります。実際に調べていて、令和4年度の第一種を45.3%としているページと45.8%としているページの両方を見つけました。

細かい差ですが、こういうことが起きるので、数字を確認したいときは協会の統計ページを直接見るのが確実です。

長期的な傾向としては、第一種も第二種も40%台後半で落ち着いています。かつて第二種は60%を超えていた時期もありましたが、受験者が増えるにつれて下がってきました。いまは第一種との差が2ポイント程度しかありません。

「簡単な資格」なのか。同じ協会の20試験で比べる

合格率46.8%という数字だけを見ると、そこそこ受かりやすそうに思えます。宅建や簿記と比べれば高いほうです。

ただ、他の資格と比べるのは実はあまり意味がありません。試験の主催者が違えば、受験者の層も、試験の作り方も、合格者数の決め方も違います。比べる土台が揃っていないんです。

そこで、同じ協会が同じ年度に実施した試験のなかで比べてみます。これなら主催者も方式も同じなので、比較として筋が通ります。

協会は令和7年度に20種類の学科試験を実施しています。合格率の高い順に並べたのが次の表です。

順位試験の種類合格率
1高圧室内作業主任者82.1%
2潜水士74.4%
3揚貨装置運転士73.1%
4ガス溶接作業主任者71.5%
5ガンマ線透過写真撮影作業主任者67.7%
6特別ボイラー溶接士66.9%
7クレーン・デリック運転士(限定なし)66.8%
8移動式クレーン運転士65.7%
9ボイラー整備士63.5%
10普通ボイラー溶接士57.8%
11林業架線作業主任者57.8%
12クレーン・デリック運転士〔クレーン限定〕57.3%
13二級ボイラー技士52.9%
14発破技士52.4%
15一級ボイラー技士50.5%
16クレーン・デリック運転士〔床上限定〕49.4%
17第二種衛生管理者48.7%
18第一種衛生管理者46.8%
19エックス線作業主任者45.7%
20特級ボイラー技士34.0%

第二種が17位、第一種が18位です。20試験のうち下から3番目と4番目ということになります。

免許試験全体の合格率は51.4%なので、衛生管理者はどちらも平均を下回っています。

順位は協会が公表している合格率を並べ替えて確認したものです。数字そのものは公表値です。

もうひとつ、この表から分かることがあります。衛生管理者は受験者数がとても多い試験です。第一種と第二種を合わせると107,054人で、協会が実施する免許試験の受験者175,624人のうち約6割を占めます。50人以上の事業場に選任義務があるので、会社の必要に応じて受ける人が多いためだと考えられます。

合格率は「試験の難しさ」だけを表さない

ここで、合格率の読み方について面白いデータを紹介します。

協会は令和6年度について、試験会場ごとの合格率も公表しています。そのうち東京試験場の数字を全国平均と並べると、こうなります。

全国東京試験場差
第一種46.3%51.0%+4.7ポイント
第二種49.8%57.5%+7.7ポイント

東京試験場のほうが、はっきり高いです。第二種では8ポイント近い差があります。

ここで「じゃあ東京で受けたほうが受かりやすいのか」と考えたくなりますが、そうではありません。試験問題は全国で共通です。会場によって問題が易しくなることはありません。

ではなぜ差が出るのか。受けている人が違うからです。東京試験場は都心にあるので、オフィスワークの方が受けやすい。会社の指示で受ける方が多く、教材や講座を用意してもらっているケースもあるでしょう。そういう層が集まれば、合格率は上がります。

つまり合格率は、試験の難しさと、受けている人の準備状況の両方を映した数字です。だから「合格率が50%だから半分の力で受かる」とは読めません。準備した人が受かって、していない人が落ちている、というだけの話かもしれないわけです。

「100時間」という数字をどう扱うか

本題の勉強時間です。

冒頭で書いたとおり、第一種は約100時間、第二種は約60時間という数字が広く出回っています。ただ、この数字を最初に出したのがどこなのか、何を根拠にしているのかは、調べても分かりませんでした。協会が発表しているものでもありません。

おそらく講座を提供している会社や合格者の体感から出てきた目安が、引用を繰り返されて定着したのだと思います。

目安として使うのは構いません。ただ、鵜呑みにするのではなく、自分の場合はどうかを考える材料を持っておいたほうがいいと思います。

確かめられる事実から考える

協会が公表している事実だけ並べると、次のようになります。

第一種第二種
問題数44問30問
満点400点300点
試験時間3時間3時間
足切りの箇所5か所3か所
合格に必要な合計点240点以上180点以上

問題数は第一種のほうが14問多く、点数では100点ぶん広いことになります。単純に比率で見れば、第一種は第二種の1.5倍ほどの範囲を扱います。

足切りの箇所についても触れておきます。合格するには、合計で60%以上に加えて、科目ごとに40%以上が必要です。第一種は労働衛生と関係法令が有害業務とそれ以外に分かれているので、40%のラインを守らなければいけない場所が5か所になります。第二種は3か所です。

詳しい配点や必要な正解数は、第一種と第二種の違いをまとめた記事で表にしています。

勉強時間が変わる4つの要因

同じ試験でも、必要な時間は人によってかなり違います。差が出るのは主にこの4つです。

1つめは、法令に慣れているかどうか。関係法令は「常時50人以上」「14日以内」「1年以内ごとに1回」といった数字と条件の組み合わせを覚える科目です。総務や人事で規程を扱ってきた方は、この形式に慣れているぶん早く進みます。まったく触れたことがないと、ここでかなり時間を取られます。

2つめは、体のしくみに関する知識。労働生理は、呼吸、循環、神経、腎臓、代謝といった内容です。医療や看護の仕事をしている方には馴染みがありますが、そうでなければ中学の理科以来ということもあります。

3つめは、第一種か第二種か。第一種は有害業務の範囲が加わります。化学物質の名前、粉じん、放射線、作業主任者の種類など、暗記量が増える部分です。

4つめは、公表問題を何回分こなすか。あとで詳しく書きますが、協会は過去の試験問題を公開しています。これを何回分やるかで、必要な時間は変わります。

広く言われている100時間・60時間という目安は、出発点としては使えると思います。ただ、法令にも生理にも縁がなかった方が第一種を受けるなら、それより多く見ておいたほうが安全です。逆に総務の経験が長い方が第二種を受けるなら、もっと短く済む可能性があります。

落ちる人がつまずいているところ

半分が落ちる試験なので、どこでつまずくのかも見ておきましょう。

苦手科目を作ると足切りで終わる

いちばん多いのが、これだと思います。

合計点が足りていても、どこか1か所が40%を割れば不合格です。「労働生理が苦手だから、法令で稼いで合計で超えよう」という作戦は使えません。

特に第一種は守るべきラインが5か所あるので、逃げ場がありません。有害業務を捨てて他で埋める、ということができない作りになっています。

だから勉強の配分も、得意なところを伸ばすより、苦手なところを40%の上まで持ち上げるほうを優先することになります。

数字の暗記を後回しにする

関係法令は数字が多い科目です。人数、日数、頻度、期間。似た数字がいくつも出てきて、混ざります。

理解しておけば思い出せる、という種類の内容ではありません。覚えるしかない部分があるので、ここを後回しにすると直前で焦ります。

会社の指示で受けて、対策せずに臨む

この試験の受験者には、会社から言われて受ける方が多く含まれます。

そうすると、自発的に取りたい資格ではないので、準備が薄くなりがちです。「合格率50%なら、テキストを1回読めばいけるだろう」と考えて臨むと、足切りで落ちます。

先ほど見た東京試験場のデータは、逆にこのことを裏づけているとも読めます。準備した人が多い会場では、合格率が上がるわけです。

公表問題の使い方と、ひとつの落とし穴

協会は過去の試験問題を無料で公開しています。公表試験問題のページから、第一種・第二種それぞれのPDFをダウンロードできます。正答も一緒に公開されています。

市販の問題集を買う前に、まずこれを1回分解いてみるのがおすすめです。いまの自分がどのくらい取れるのかが分かるので、勉強計画が立てやすくなります。

更新は年2回

公表問題は4月と10月に更新されます。たとえば令和8年4月に掲載された問題は、令和7年7月から12月までに実施されたものです。

古いものは順次消されていくので、必要なぶんは早めにダウンロードしておくといいでしょう。

法令改正には対応していない

ここが注意点です。協会は公表問題のページに、はっきりこう書いています。掲載されている問題は、その後に施行された法令には対応していない、と。

つまり、関係法令の問題は、いまの法令だと答えが変わっている可能性があります。公表問題で「正しい」とされていた選択肢が、改正後は正しくなくなっていることがあるわけです。

労働安全衛生関係の法令は改正が入ります。だから公表問題は、出題の形式や傾向をつかむために使い、法令の内容そのものは最新のテキストや公式情報で確認する、という使い分けが安全です。

労働衛生や労働生理は改正の影響を受けにくいので、こちらは公表問題をそのまま活用しやすいと思います。

勉強期間の組み立て方

この試験には、他の資格試験と違う大きな利点があります。試験日が毎月あることです。

各センターで月に数回実施されていて、そのほかに出張特別試験もあります。年に1回しかない試験だと、そこに間に合わせるしかありません。落ちたら1年待ちです。

衛生管理者は、自分の準備が整ったタイミングで受けられます。この自由度を活かすと、計画が立てやすくなります。

進め方の一例

ひとつの組み立て方を示しておきます。時間の目安は、広く言われている100時間・60時間を前提にしたものです。ご自身の状況に合わせて調整してください。

段階やること
最初にやる公表問題を1回分、時間を計って解く。何もしていない状態の点数を知る
前半テキストを1周する。分からないところは飛ばして、まず全体を見る
中盤公表問題を複数回分やる。科目ごとの得点を毎回記録し、40%を割る科目を洗い出す
後半40%を割った科目に時間を寄せる。法令の数字はここで詰める
受験日を決める公表問題で毎回60%を安定して超えたら、次の試験日に申し込む

ポイントは、受験日を先に決めないことです。仕上がりを見てから申し込むほうが、この試験には合っています。

ただし、申し込みには期限があります。オンライン申請は試験日の14日前まで、しかも定員に達したら締め切られます。実務経験を証明する事業者証明書も必要です。書類の準備には時間がかかるので、そこは早めに動いておいてください。手続きの詳しい流れは受験資格と事業者証明書の記事にまとめています。

よくある質問

独学でも合格できますか

公表問題が無料で手に入り、市販のテキストも複数出ているので、独学の環境は整っています。

ただ、法令にも体のしくみにも縁がなかった方の場合、何が重要で何が細かい話なのかの見分けがつきにくく、時間がかかることがあります。自分で情報を絞り込むのが苦手だと感じる方は、講座を使ったほうが早いかもしれません。

独学と講座の選び方は、判断材料をまとめた記事で詳しく扱っています。

1週間で合格できると書いているサイトがあります

短期間で合格した方は実際にいると思います。ただ、そういう例は、もともと関連知識があったか、集中できる時間をまとめて取れたか、どちらかであることが多いはずです。

合格者の最短記録を自分の計画にするのは危険です。落ちても毎月受け直せるとはいえ、受験料は8,800円かかります。

落ちたらまた事業者証明書が必要ですか

必要ありません。前回の結果通知書か受験票を出せば、受験資格を証明する書類は省略できます。会社にもう一度お願いする必要はないので、その点は安心してください。

科目ごとの必要な正解数を教えてください

第二種は3科目とも各100点なので、それぞれ40点、つまり4問以上の正解が必要です。合計は180点以上です。

第一種は範囲ごとに配点が違うので、少し複雑になります。第一種と第二種の違いの記事に、範囲ごとの必要正解数を表にしてあります。

まとめ

最後に整理します。

合格率は第一種46.8%、第二種48.7%です。半分が落ちる試験だと考えておいたほうがいいと思います。

同じ協会が実施する20試験のなかでは、第二種が17位、第一種が18位。全体平均の51.4%を下回っています。「協会の試験のなかでは難しめ」というのが、データから見た位置づけです。

合格率は試験の難しさだけでなく、受けている人の準備状況も映します。東京試験場の合格率が全国平均より高いのは、そのいい例です。だから「半分受かるから大丈夫」とは考えないほうがいいでしょう。

勉強時間の「100時間・60時間」は、出典のはっきりしない目安です。使ってもいいのですが、法令や体のしくみに慣れているかで大きく変わります。自分の場合はどうかを考えて調整してください。

まずは協会の公表問題を1回分、無料で解いてみるのがいいと思います。いまの自分の点数が分かれば、あと何をすればいいかが見えてきます。この試験は毎月受けられるので、仕上がってから申し込めばいいんです。

勉強を始める前に確認しておきたいことは、完全ガイドで整理しています。

参考・出典

この記事は2026年8月時点の公表情報をもとに書いています。合格率の順位づけは、協会が公表した令和7年度の合格率を並べ替えて算出したものです。統計は毎年更新されるため、最新の数値は協会の統計ページでご確認ください。勉強時間の目安は一般に言われている数値を紹介したもので、協会が公表しているものではありません。

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