衛生管理者は第一種と第二種どっちを受ける?13業種の一覧と合格率データで判断【2026年版】

衛生管理者を受けようと決めたあと、次にぶつかるのがこの疑問だと思います。第一種と第二種、どっちを受ければいいのか。

ネットで調べると「第二種のほうが簡単だから、まず第二種から」という説明をよく見かけます。でも、これは少し古い考え方かもしれません。

協会が公表している最新の合格率を見ると、第一種が46.8%、第二種が48.7%でした。差は2ポイントもありません。「第二種のほうがぐっと受かりやすい」という状況ではなくなっています。

では何で決めればいいのか。答えは、勤務先の業種です。

じつは法律で、第一種でなければ衛生管理者になれない業種が13個、はっきり決まっています。多くの解説記事は「情報通信業、金融・保険業などは第二種でOK」といった書き方をしていますが、これでは自分の会社が入るのかどうか判断できません。逆から見たほうが早いんです。

この記事では、次のことを整理しました。

  • 第一種が必要な13業種の一覧(法令のまま)
  • 試験の中身がどれだけ違うのか、数字で比較
  • 合格基準の落とし穴。第一種は足切りが5か所ある
  • 業種以外の判断材料と、迷ったときの決め方

読み終わるころには、自分がどちらを受けるべきか決まっているはずです。

この記事は、2026年8月時点で安全衛生技術試験協会の公式サイトと労働安全衛生規則の条文を確認して書いています。制度は変わることがあるので、申し込む前には公式サイトで最新の情報をご確認ください。

選ぶ基準は「難易度」ではなく「勤務先の業種」

先に結論を書きます。

第一種と第二種は、上下関係のある資格ではありますが、選び方は「どちらが簡単か」ではありません。勤務先の業種で、使える免許が決まっています。

ここを外すと、せっかく合格しても会社で衛生管理者に選ばれない、ということが起こります。第二種を取ったのに、自分の会社は第一種でなければダメだった、というパターンです。

だから、まず自分の会社の業種を確認するところから始めてください。

「第二種のほうが簡単」は、いまのデータでは言いにくい

その前に、難易度の話を片づけておきます。

協会が公表している令和7年度の統計は、次のとおりです。

受験者数合格者数合格率
第一種衛生管理者66,401人31,046人46.8%
第二種衛生管理者40,653人19,796人48.7%

差は1.9ポイントです。ほとんど同じと言っていい水準です。

ネット上には「第一種は45%弱、第二種は51%弱」といった数字を載せている記事もありますが、これは以前のデータです。第二種の合格率はここ数年下がってきていて、いまは第一種との差が縮まっています。

試験範囲は第一種のほうが確かに広いです。あとで詳しく見ますが、問題数は44問と30問で、14問も違います。それでも合格率にほとんど差が出ないのは、受ける人の層が違うからだと考えられます。第一種を受ける人は、会社の指示で受けていて対策もしっかりしている、というケースが多いのかもしれません。

いずれにしても、「第二種なら楽に受かる」という前提で選ぶのは危険です。どちらを受けても、それなりの勉強は必要になります。

第一種が必要な13の業種

ここが、この記事でいちばん大事なところです。

労働安全衛生規則という決まりの第7条に、業種ごとに誰を衛生管理者にできるかが書かれています。そこで名前が挙がっている業種は、第一種(または衛生工学衛生管理者、医師など)でなければ選任できません。

その業種が、次の13個です。

第一種が必要な業種ひとこと補足
農林畜水産業農業・林業・畜産・漁業
鉱業採掘・採石など
建設業工事・施工
製造業(物の加工業を含む)加工業も入ります
電気業発電・送電など
ガス業
水道業
熱供給業地域冷暖房など
運送業トラック・鉄道・バスなど
自動車整備業整備工場・ディーラーの整備部門
機械修理業
医療業病院・クリニックなど
清掃業ビルメンテナンス・廃棄物処理など

そして、ここに載っていない業種は、第二種でも選任できます。法令では「その他の業種」とまとめられていて、第一種でも第二種でもよいことになっています。

つまり判断のしかたは、こうです。自分の会社の業種が13個のどれかに当てはまるなら第一種。当てはまらないなら第二種でも足ります。

見落としやすい業種

13業種のうち、建設業や製造業が入るのは想像しやすいと思います。ただ、意外に思われるものもあります。

医療業が入っているのは、見落としがちなポイントです。病院やクリニックで働いている方は、第二種では衛生管理者に選任できません。医療現場には放射線や薬品など、健康に影響しうるものがあるためです。

清掃業も入ります。ビルメンテナンスや廃棄物処理の会社は第一種が必要です。

運送業、自動車整備業、機械修理業も対象です。物流会社やディーラーの整備部門にお勤めの方は注意してください。

それから熱供給業という、あまり聞きなれない業種も入っています。地域の冷暖房を供給する事業のことです。

第二種でよい業種の例

13業種に入らない業種なら、第二種で足ります。たとえばこういった業種です。

  • 情報通信業(IT、ソフトウェア、通信など)
  • 金融業・保険業
  • 卸売業・小売業
  • 不動産業
  • 飲食業
  • 教育・学習支援業
  • 各種サービス業

いわゆるオフィスワークが中心の会社は、だいたいこちらに入ります。

自分の会社がどちらか分からないとき

グループ会社の中で業種が分かれている場合や、ひとつの会社で複数の事業をやっている場合は、判断が難しくなります。

ここで押さえておきたいのは、判断の単位は「会社」ではなく「事業場」だということです。本社と工場が別の事業場なら、それぞれで業種を見ます。本社が事務所だけなら「その他の業種」、工場は「製造業」というように分かれることがあります。

迷ったときは、社内の総務や人事に確認するのが早いです。すでに衛生管理者を選任している会社なら、どの免許の人が選任されているかを見れば分かります。

それでも判断がつかない場合は、所轄の労働基準監督署に聞くこともできます。

試験の中身はどれくらい違うのか

次に、試験そのものの違いを見ていきます。

科目名は同じです。どちらも「労働衛生」「関係法令」「労働生理」の3つです。違うのは、有害業務に関する内容が入るかどうか。第一種には入り、第二種には入りません。

第一種第二種
労働衛生(有害業務)10問/80点出題なし
労働衛生(有害業務以外)7問/70点10問/100点
関係法令(有害業務)10問/80点出題なし
関係法令(有害業務以外)7問/70点10問/100点
労働生理10問/100点10問/100点
合計44問/400点30問/300点
試験時間3時間(13:30〜16:30)3時間(13:30〜16:30)

問題数は14問、点数は100点ぶん違います。ただ、試験時間はどちらも3時間で同じです。つまり第一種のほうが、1問にかけられる時間は短くなります。

科目免除を受ける方は、どちらも2時間15分(13:30〜15:45)になります。

合格基準の落とし穴。第一種は足切りが5か所ある

ここは意外と知られていない、しかも大事なところです。

合格の条件は2つあります。合計で60%以上取ること。そしてもうひとつ、科目ごとに40%以上取ることです。合計点が足りていても、どこか1つの科目が40%を割ったら不合格になります。いわゆる足切りです。

ここで第一種と第二種に、大きな違いがあります。

協会の説明では、第一種は「科目のうち範囲が分かれているものについては範囲ごと」に40%以上が必要とされています。労働衛生と関係法令は、有害業務とそれ以外に分かれています。ということは、こうなります。

  • 第二種の足切りは3か所(労働衛生・関係法令・労働生理)
  • 第一種の足切りは5か所(労働衛生の有害・有害以外、関係法令の有害・有害以外、労働生理)

足切りが多いということは、苦手分野を作れないということです。第一種で「有害業務は捨てて、ほかで点を稼ぐ」という戦い方はできません。

配点から必要な正解数を計算すると、こうなります。

第一種の範囲配点40%に必要な点必要な正解数
労働衛生(有害業務)10問/80点32点4問
労働衛生(有害業務以外)7問/70点28点3問
関係法令(有害業務)10問/80点32点4問
関係法令(有害業務以外)7問/70点28点3問
労働生理10問/100点40点4問

そのうえで、合計240点(400点の60%)以上が必要です。

第二種は3科目とも各100点なので、それぞれ40点以上、合計180点以上が条件になります。

ちなみに協会は過去の問題を公開しています。どんな内容か気になる方は、公表問題のページで実際の問題を見られます。受けるかどうか迷っている段階でも、一度のぞいてみると判断しやすくなると思います。

業種のほかに考えておきたいこと

基本は業種で決まりますが、それだけで割り切れない場合もあります。判断材料をいくつか挙げておきます。

転職や異動を考えているなら第一種

いまの会社が「その他の業種」でも、将来の選択肢を広げたいなら第一種です。

第一種はすべての業種で使えます。第二種は13業種で使えません。転職先が製造業や医療業だった場合、第二種では選任してもらえないので、資格を活かせません。

グループ会社への異動がありうる方も、第一種のほうが安心です。

会社の指示で受けるなら、先に確認する

会社から「衛生管理者を取ってほしい」と言われて受ける場合は、必ずどちらを取ればいいか確認してください。

会社が選任義務を果たすために取らせている場合、必要な免許は決まっています。自己判断で第二種を受けて、あとから「第一種じゃないと意味がない」と言われるのは、いちばん避けたい展開です。

受験料や講座費用を会社が出してくれる場合もあるので、そのあたりも合わせて聞いておくといいと思います。

受験料はどちらも同じ

意外かもしれませんが、試験の手数料は第一種も第二種も同じ8,800円です。消費税法により非課税とされています。

範囲が広いほうが高い、ということはありません。費用で選ぶ理由はないわけです。

受験資格はまったく同じ

受験資格も、第一種と第二種で違いはありません。学歴と実務経験の条件はどちらも共通です。

「第二種のほうが条件がゆるいのでは」と考える方もいますが、そうではありません。受験資格の詳しい内容は受験資格16パターンの記事でまとめています。

第二種から受けて、あとで第一種に進む場合も、もう一度受験資格を証明する必要はありません。この点は次で説明します。

第二種から第一種へ進む道もある

「まず第二種を取って、あとで第一種に挑戦する」という進め方もできます。

この場合、ゼロからやり直しにはなりません。「特例第一種衛生管理者免許試験」という枠が用意されています。

特例第一種の試験内容

科目問題数・配点
労働衛生(有害業務に係るものに限る)10問/80点
関係法令(有害業務に係るものに限る)10問/80点
合計20問/160点
試験時間2時間(13:30〜15:30)

すでに勉強した範囲は出ません。有害業務の部分だけを追加で問われる形です。

手続きも簡単になります。受験申請書のA欄の上に「特例」と赤字で書き、第二種の免許証のコピーを添えるだけです。受験資格を証明する書類、つまり事業者証明書や卒業証明書はいりません。

ただし住所が変わっている場合は、いまの住所が分かる郵便物などのコピーが必要です。

二段階で行くべきか、最初から第一種か

二段階で進めるやり方には、いい面と悪い面があります。

いい面は、一度の試験で覚える量が減ることです。まず30問ぶんを固めて、次に20問ぶんを足す。仕事が忙しくてまとまった勉強時間が取れない方には、こちらのほうが現実的かもしれません。

悪い面は、手間とお金が倍になることです。受験料は8,800円が2回で17,600円。申し込みも2回、試験会場に行くのも2回です。それに、第二種を取ってから第一種に挑むまでに間が空くと、共通範囲の記憶が薄れます。

合格率に大きな差がないことも踏まえると、第一種が必要な業種にお勤めなら、最初から第一種を目指すほうが効率的だと思います。二段階が向いているのは、いまは第二種で足りるけれど将来第一種も考えたい、という方でしょう。

もうひとつの免許「衛生工学衛生管理者」

衛生管理者の免許には、実は3種類目があります。衛生工学衛生管理者です。

これは試験ではなく、講習を受けて取得する免許です。有害なガスや粉じんが出る職場で、設備面から作業環境を改善する役割を担います。

この免許を持つ人を置かなければならない事業場も決まっています。労働安全衛生規則第7条第1項第6号に条件が書かれています。

条文にあたると、次の2つを両方満たす場合です。常時500人を超える労働者を使用していること。そして、坑内労働、または労働基準法施行規則第18条の第1号・第3号から第5号・第9号に挙げられた業務に、常時30人以上を従事させていること。

ここで気をつけたいことがあります。解説記事のなかには「有害業務に常時30人以上」と書いているものがありますが、条文では第18条のすべてではなく、特定の号だけが対象です。似た条件でも、同じ第7条第1項第5号(専任の衛生管理者を置く条件)は第18条の全部が対象なので、範囲が違います。

とはいえ、これから受験を考えている方が最初に選ぶ免許ではありません。まずは第一種か第二種か、というところで判断すれば十分です。

結局どちらを選べばいいのか

ここまでの話を、順番に確認できる形で整理します。上から順に見ていってください。

  1. 会社から指示が出ているか。出ているなら、その通りにする(まず確認する)
  2. 自分の事業場の業種が13業種に入るか。入るなら第一種
  3. 入らない場合、転職や異動の可能性があるか。あるなら第一種
  4. いまの会社で長く働く予定で、13業種に入らないなら第二種でも足りる
  5. 迷うなら第一種。すべての業種で使えるので、選択肢が狭まりません

5番目について補足します。合格率の差が2ポイント弱で、受験料も同じなら、第一種を選んでおくデメリットは「勉強量が増えること」だけです。時間に余裕があるなら、第一種にしておくと後悔が少ないと思います。

よくある質問

第二種を先に取ると不利になりますか

不利にはなりません。特例第一種という枠があるので、あとから有害業務の範囲だけを追加で受けられます。受験資格の証明書も不要になります。

ただ、費用と手間は2回分かかります。

第一種を受けるのに、第二種の合格は必要ですか

必要ありません。段階を踏む義務はなく、最初から第一種を受けられます。

第一種と第二種で、仕事の内容は変わりますか

衛生管理者として行う仕事そのものは変わりません。職場の巡視、健康管理、作業環境の管理、労働衛生教育などです。

違うのは、どの業種の事業場で選任してもらえるか、という点だけです。

会社が50人未満なら、資格は意味がないですか

衛生管理者を選任する義務があるのは、常時50人以上の労働者を使う事業場です。50人未満の事業場では選任義務はありません。

ただ、資格そのものが無効になるわけではありません。会社が成長して50人を超えたときに必要になりますし、転職のときにも使えます。労働安全衛生の知識自体は、規模にかかわらず役に立つものです。

試験日はどれくらいありますか

第一種も第二種も、各センターで月に数回実施されています。年に1回しかない試験と違って、都合のいい日を選べます。

そのほかに出張特別試験もあります。近くにセンターがない方は、こちらを使うと移動の負担が減ります。

まとめ

最後に大事なところをまとめます。

選ぶ基準は難易度ではなく、勤務先の業種です。法令で第一種が必要な業種が13個決まっているので、まず自分の事業場がそこに入るかを確認してください。医療業、清掃業、運送業、自動車整備業、機械修理業、熱供給業は見落としやすいので気をつけてください。

合格率は第一種46.8%、第二種48.7%で、差はほとんどありません。「第二種なら楽」という前提は、いまのデータでは成り立ちにくくなっています。

第一種は足切りが5か所あるので、苦手分野を作れません。範囲が広いぶん、まんべんなく仕上げる必要があります。

迷ったら第一種。受験料は同じで、すべての業種で使えます。将来の選択肢を狭めずに済みます。

受けるほうが決まったら、次は勉強の進め方です。試験は毎月のように実施されているので、準備ができ次第すぐ挑戦できます。

合格率の詳しい分析は難易度を検証した記事で扱っています。

資格取得までの全体像を知りたい方は、完全ガイドをご覧ください。

参考・出典

この記事は2026年8月時点の公表情報と条文をもとに書いています。合格率は令和7年度の数値です。制度・法令・日程は変わることがあるので、申し込むときは必ず公式サイトで最新の情報をご確認ください。自分の事業場がどの業種に当たるかの判断は、社内の担当部署または所轄の労働基準監督署にご確認ください。

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